まずは被写界深度とは?
「ピントが合って見える範囲の深さ」のことです。
🔍 もう少し詳しく言うと…
カメラで写真を撮ったときに、「完全にピントが合っている位置」は1点だけですが、
実際にはその前後にも「ピントが合っているように見える範囲」があります。
この前後の“奥行き”の範囲を「被写界深度」と呼びます。
被写界深度を決める4つの要素
① F値(絞り) | 数字が小さい(F1.4など)と浅く、大きい(F8など)と深くなる。 |
② 焦点距離 | 望遠(長い)ほど浅く、広角(短い)ほど深くなる。 |
③ 撮影距離 | 被写体に近づくほど浅く、遠ざかるほど深くなる。 |
④ センサーサイズ | フルサイズなど大きいほど浅く、スマホなど小さいほど深くなる。 |
- ポートレート(背景がボケている)写真
→ 被写界深度が「浅い」
→ ピントが人物だけに合って、背景はボケる - 風景写真(全体にピントが合っている)
→ 被写界深度が「深い」
→ 手前から奥までくっきり見える
絞ったときの被写界深度(ピントの幅)は、F値が同じなら「明るいレンズでも暗いレンズでも同じ」です。
被写界深度が同じになるかどうかは、以下の条件が一致しているかどうかに依存します
・焦点距離が同じ
・絞り値(F値)が同じ
・被写体との距離が同じ
・センサーサイズが同じ
具体的なケースで比較
・単焦点:35mm F2 → F8で撮影
・ズーム:24-105mm F4を「35mm」に合わせて、F8で撮影
この条件なら、レンズの種類(単焦点かズームか)に関係なく、被写界深度はほぼ同じです。
でも、ズームレンズの焦点距離が変わると、被写界深度は変わります。
望遠側(105mmなど)にすると被写界深度は浅くなる。
広角(35mmなど)にすると被写界深度は深くなる。
なぜか?
被写界深度(DOF)は、「レンズの種類」ではなく「撮影条件」によって決まるからです。
つまり、以下の式で決まります:
DOF ≈ f² / (N × c) × (s / (s – f))
- f = 焦点距離
- N = F値
- c = 許容錯乱円径(センサーによって決まる)
- s = 被写体距離
では「明るいレンズの方がピントが深くなる」は間違い?
はい、「F値を同じにすれば」被写界深度は同じなので、
明るいレンズの方が絞ったときにピントの幅が深くなる
→ ❌ 間違い(条件が同じなら変わらない)
では、明るいレンズのメリットは何?
- F1.4など**開放F値が小さい(明るい)**と、浅い被写界深度で背景を大きくぼかせる
- 暗い場所で速いシャッター速度が使える
- 光量が足りない場面で有利(ISO感度を上げずに済む)
単焦点レンズのメリットは?
📷 1. 画質が良い
- 構造がシンプルなため、解像力やコントラストが高く、シャープな写真が得られやすい。
- ズームレンズに比べてレンズ枚数が少なく、光のロスや収差が少ない。
🌙 2. 明るい(F値が小さい)
- F1.4やF2などの大口径レンズが多く、暗所撮影や夜景に強い。
- ボケ味がきれいで大きい。被写体を際立たせた撮影に向いている。
🪶 3. コンパクトで軽量
- ズーム機構がない分、サイズも重量も抑えられている。
- 持ち運びやすく、スナップ撮影や旅行に最適。
🧠 4. 撮影スキルが向上しやすい
- 焦点距離が固定されているため、「自分で動いて構図を決める」必要がある。
- 結果として構図感覚や被写体との距離感が身につく。
💰 5. コスパが良い
- 同じF値のズームレンズに比べて、価格が安いことが多い。
- コスパ良く高品質な写真が得られる。
補足
被写界深度が「同じ」でも、レンズによって**ボケ味の美しさ(描写の個性)**は異なります。
例えば単焦点はボケが柔らかい、ズームはやや硬め、という印象になることもあります。
単焦点レンズは開放F値が明るいので「浅い被写界深度を得やすい」という意味で有利です。
ただし、F8まで絞るとズームでも単焦点でも被写界深度の差はほぼ消えます。
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