ストロボ撮影における照明比(Lighting Ratio)とは、主光源(キーライト)と補助光源(フィルライト)などの明るさの比率を示すもので、写真の「コントラスト(陰影の強さ)」を決定する重要な要素です。以下に詳しく解説します。
照明比の基本概念
・キーライト(主光源):被写体に対して最も強く当たる光。
・フィルライト(補助光):影の部分を明るくして、全体のコントラストを調整するための光。
照明比は通常、キーライトとフィルライトの明るさの比率で表されます。たとえば:
- 1:1 → 両方の明るさが同じ → 影が少なく、フラットな印象
- 2:1 → キーライトがフィルライトの2倍明るい → 自然な立体感
- 4:1 → コントラスト強め → 劇的・印象的な雰囲気
照明比の計算方法(F値や露出差から)
照明比は**F値や露出段(EV)**から計算できます。
例1:キーライトがフィルライトより1段明るい(1EV差)
- 明るさの差が1EV(1段) → 照明比 = 2:1
例2:2段差(2EV)
- 照明比 = 4:1(キーライトがフィルライトの4倍の明るさ)
露出差と照明比の関係は以下の通り:
明るさの差(段) | 照明比 |
---|---|
0 EV | 1:1 |
1 EV | 2:1 |
2 EV | 4:1 |
3 EV | 8:1 |
キーライトがF8のとき、照明比ごとのフィルライトのF値
照明比 | 明るさの差(段数) | フィルライトのF値 |
---|---|---|
1:1 | 0段差 | F8 |
2:1 | 1段差 | F5.6(F8の2倍の光量) |
4:1 | 2段差 | F4(F8の4倍の光量) |
8:1 | 3段差 | F2.8(F8の8倍の光量) |
実践例(2灯ストロボ使用)
- セットアップ:キーライト(左45度)、フィルライト(右45度)
- 照度設定:
- キーライト:フル出力(例えばF8)
- フィルライト:1段下げてF5.6 → 照明比2:1
この状態で撮影すると、顔の陰影に適度な立体感が生まれ、自然なポートレートに仕上がります。
照明比の選び方と作例イメージ
照明比 | 特徴 | 使用例 |
---|
1:1 | 影がほとんどない。柔らかくフラット。 | 美容写真、パスポート写真 |
2:1 | わずかな立体感。自然な陰影。 | 証明写真、ビジネスポートレート |
4:1 | 明確な立体感。ややドラマチック。 | ファッションポートレート |
8:1 以上 | 強いコントラスト。劇的・芸術的。 | モノクロ作品、シネマティック写真 |
測定と調整のヒント
入射光式のフラッシュメーターで、影側と光側の露出差を計測。
ストロボの出力を調整することで簡単に照明比を変更可能。
影を柔らかくするには、フィルライトにディフューザーやソフトボックスを使うのも効果的。
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