ストロボの「ガイドナンバー(GN, Guide Number)」は、ストロボの光量(明るさ)を表す指標です。撮影距離と絞り(F値)との関係を示し、適切な露出を得るための目安として使います。
■ ガイドナンバーの基本
定義:ガイドナンバー(GN) = 撮影距離(m) × 絞り値(F値)
※ISO100・フル発光時の値が基準です。
■ 具体例
例えば、GNが40のストロボがあったとします。
- 被写体までの距離が 5m のとき:
- 適正な絞り値は F8(40 ÷ 5 = 8)
- 絞りが F4 のとき:
- 適正な距離は 10m(40 ÷ 4 = 10)
■ ISO感度との関係
ガイドナンバーは ISO100 が基準ですが、ISO感度が変わるとGNも変わります:
- ISOを 1段(倍)上げるごとにGNは√2(約1.4)倍 になります。
例:
- GN40(ISO100) → GN56(ISO200) → GN80(ISO400)
💡 光量を落とした場合(1/2、1/4発光など)
光量を下げるとGNも下がります。発光量を1段下げるごとにGNは√2分の1になります。
発光量 | GN(比率) | GN40基準なら |
---|---|---|
フル | 1.0 | GN40 |
1/2 | 0.71 | GN28 |
1/4 | 0.5 | GN20 |
1/8 | 0.35 | GN14 |
1/16 | 0.25 | GN10 |
■ ズームとの関係
ズーム機能付きストロボでは、照射角(カバーする画角)を狭くするほど光が集中し、GNが大きくなります。
例:
- 24mmカバー時 GN28
- 50mmカバー時 GN40
- 105mmカバー時 GN60
※つまり、望遠で使うとGNが大きくなる。
■ 実用上の注意点
GNは理論値であり、実際の露出は反射率・環境光・壁の反射などの影響を受けます。
被写体が白や黒、屋内か屋外かでも変わります。
TTL調光を使うとカメラが自動で最適な発光量を計算してくれるので、GNを気にせず使えます。
■ まとめ
用語 | 説明 |
---|---|
ガイドナンバー | ストロボの光の強さの指標 |
計算式 | GN = 撮影距離(m) × F値 |
ISO依存性 | ISOを上げるとGNも上がる |
ズーム依存性 | ズームして照射範囲を狭くするとGNが上がる |
TTL調光 | 自動で最適な発光量を調整 |
📌 ワンポイント
- シャッター速度はストロボ同調速度内にする(通常1/125〜1/250秒)
- 被写体が白や黒の場合、露出補正が必要なことがある
- 撮影後のヒストグラムや液晶で結果を確認して補正
✅ 複数ストロボの合成ガイドナンバーの公式
2台のストロボを同時に発光させた場合、合成ガイドナンバー(Combined Guide Number, GN合成値)は、以下のように計算できます:
GN合成 = √(GN₁² + GN₂²)
これは、光の強さ(エネルギー)が加算される性質に基づいた計算式です。
🔍 具体例
たとえば、GN40のストロボを2台同時に使った場合の合成GNは:
GN合成 = √(40² + 40²) = √(1600 + 1600) = √3200 ≈ 56.6
➡ 約 GN57 相当になります。
2台のガイドナンバーの違うストロボの場合の合成GNは:
- ストロボA:GN40
- ストロボB:GN28
この2台を同時に使った場合の合成GNは:
GN合成 = √(40² + 28²)
= √(1600 + 784)
= √2384 ≈ 48.8
➡ この場合、2台の合成GNは 約49 になります。
✅ まとめ
条件 | 合成GN計算式 |
---|---|
同一ストロボ2台 | GN × √2(約1.4倍) |
複数台同時発光 | √(GN₁² + GN₂² + … + GNₙ²) |
🎯 ワンポイント実用例
- 通常GN40で撮影 → 距離5mならF8
- 同じストロボ2台(GN40)使用 → GNは約57 → F11.4(つまりF11〜F16の間)
ハイスピードシンクロについて
ハイスピードシンクロ(High Speed Sync:HSS)は、シャッター速度が通常のストロボ同調速度(例:1/200秒や1/250秒)を超える高速シャッターでも、ストロボを使える技術です。特に屋外や明るいシーンで、背景をぼかしたい場合に効果的です。
✅ 通常のストロボとシャッター速度の関係
一般的な一眼レフやミラーレスカメラでは、通常のストロボは「同調速度」より速いシャッターでは正しく発光しません。
なぜなら:
- シャッター幕は「先幕→後幕」と順に開きますが、
- 高速シャッターでは「スリット状」に動くため、
- 通常の瞬間的なストロボ光では全体を均一に照らせないのです。
🌟 ハイスピードシンクロの仕組み
ハイスピードシンクロでは、ストロボが通常の「一瞬発光」ではなく、連続的にパルス発光しながらシャッター幕の動きに合わせて光を当て続けます。
これにより、1/1000秒や1/8000秒などの高速シャッターでも全画面を均等に露光できます。
✅ メリット
メリット | 説明 |
---|---|
🔆 明るい場所でも開放絞りが使える | 1/1000秒や1/4000秒などの高速シャッターが使えるため、F1.8やF2.8などの浅い被写界深度で背景をぼかせる。 |
📸 日中シンクロが可能 | 明るい昼間でもフラッシュを使って顔に光を当て、逆光でも自然なポートレートが可能。 |
🎨 露出コントロールの自由度 | ストロボを補助光として使いながら、背景は暗く、被写体だけ明るくするなどの演出がしやすい。 |
❌ デメリット
デメリット | 説明 |
---|---|
⚡ 光量が大きく低下する | 連続発光を行うため、通常発光時よりも出力が大きく落ちる(距離を稼げない) |
🔋 バッテリー消費が早い | パルス発光を繰り返すため、電力消費が激しく電池が早く減る |
🌡 発熱リスク | 長時間使用するとストロボが熱を持ち、自動停止や故障の原因になることも |
💰 対応機材が必要 | HSS対応のストロボ・カメラ・送信機が必要(古い機材では不可) |
📌 使用シーン例
- 逆光ポートレート(背景を飛ばさず人物を明るく)
- 明るい屋外での開放F値撮影
- 背景を暗く落としたシルエット風写真
- スポーツや動きの速い被写体の撮影
🔧 使用時のポイント
- カメラとストロボの両方で「HSSモード」をONにする(自動的に有効な機種もある)
- シャッター速度を1/1000秒〜1/8000秒などに設定
- 被写体が遠いと光が届かないため、近距離中心に使うのが効果的
- ISOや絞りを調整して露出を補う
🧮 簡単な比較(GN)
モード | GN(仮想) | 撮影距離(F4の場合) |
---|---|---|
通常発光(GN40) | 40 | 10m |
HSS時(約GN14) | 14 | 3.5m |
🎯 まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
HSSとは? | 高速シャッターでもストロボ発光できる機能 |
最大の利点 | 明るい場所での開放絞り使用、自然な補助光効果 |
注意点 | 光量低下・発熱・対応機材が必要 |
ハイスピードシンクロはシャッタースピードが速くなるほど GNは変わりますか?
はい、ハイスピードシンクロでは、シャッタースピードが速くなるほど実質的な「ガイドナンバー(GN)」は下がります。
✅ 理由:HSSは「連続発光」だから
通常のストロボ(非HSS)は、一瞬(1/1000秒〜1/20,000秒程度)で最大出力の光をパッと発光します。
しかし、HSSでは、シャッター幕がスリット状に動く時間(例:1/8000秒)ずっと光を出し続ける必要があるため、ストロボは連続的な弱い光を発し続けるモードになります。
その結果:
- 光のピークが抑えられる
- エネルギーが分散される
- ⇒ 被写体に届く光が少なくなる
📉 実質GNがどう変化するか(イメージ)
たとえば、通常発光でGN40のストロボがあったとすると:
シャッタースピード | GN(目安) |
---|---|
1/200秒(同調速度) | GN40 |
1/500秒 | GN28程度 |
1/1000秒 | GN20程度 |
1/4000秒 | GN14程度 |
1/8000秒 | GN10前後 |
※これは一例であり、機種・設定・照射角・光量などにより異なります。
✅ 実際の影響
HSSを使ってシャッターを高速にすると:
- 同じ距離でも被写体が暗く写る
- 同じ明るさを得るには「ストロボを近づける」「ISOを上げる」「絞りを開く」などの対処が必要
💡補足
- 「シャッタースピードによってGNが変わる」のはHSSモードだけ
- 通常のストロボ発光(1/200秒以下)では、シャッタースピードがGNに影響しません
- HSSのGNはカタログスペックには記載されないことが多く、実際はテスト撮影で把握するしかない場合もあります
🧪 実践例
仮に通常GN40のストロボを、HSSで1/8000秒にして使った場合:
- GNは約10〜12まで落ちる
- F値をF2.8に、ISOを800にするなどの工夫が必要になる
- 被写体との距離は3m以内が限界になることも
📝 まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
HSS中のGNは下がる? | ✅ はい。シャッタースピードが速いほど下がる |
なぜ? | ストロボが連続発光になり、光のピークが弱まるため |
実用対策 | ストロボを近づける、ISO上げる、F値を開けるなど |
目安:GN40 → GN? | 1/8000秒では約GN10程度に低下 |
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